私の祖母は愛知県の日間賀島という小さな島で小さな洋服店を営んでいました。
当時、日間賀島にある洋服店は祖母の店だけだったと思います。
祖母は、来店するお客さんから「こんな洋服が欲しい」と注文を受けると、
その人にピッタリの洋服を探しに、船に乗って名古屋の洋服問屋に買い出しに出かけます。
そして、お客さんの体型や顔立ちに似合う、ニーズにピッタリの、最高のものを探し出すために沢山の問屋を巡ります。
そうして探し出した「お客さんにとっての最高の服」を包んだ大きな風呂敷を背負って島に帰ります。
島に帰ると、お客さんは祖母の店に洋服を買い取りに来ます。
祖母は、その洋服をそのまま売ることはほとんどありませんでした。
お客さんに最高にフィットするように、必ずどこかしらか「お直し」をするのです。
その「お直し」は、裾上げのような簡単なものもありますが、
袖山の形を直したり、身幅を直したり、
時にはデザインが変わるくらいの大解体をしたり、
手渡した後も、破れを直すなどのアフターフォローも受付けます。
祖母は、自分の持つ洋裁スキルを常に駆使し、試行錯誤を惜しまず、
お客さんにとって最高のものを提供するために妥協をしませんでした。
洋服の注文をしに来たお客さんが、いつのまにか祖母に身の上相談をしている光景を
私は良く見ていました。
私は、そんな祖母を誇らしく思っていました。
「働くとはどういうことなのか」について考える時、
亡き祖母の姿勢を必ず思い出します。
その人に必要なものを、その人にぴったりにカスタマイズして、フォローもしっかりする。
すべての工程を、心を込めて丁寧に。
私もそんな姿勢でお仕事をしたいと思っています。